整体の仕事をしている一方で、私にとって音楽は昔から大切な存在です。このカテゴリーでは、施術を少し離れて、心に残った音楽や本、映画について書いています。
このアルバムが発売された頃、僕はモラトリアム真っ只中だった。
世界との境界線は、はっきりと色濃く、しかも波打っていたように思う。
このままでいいような、よくないような。絶対によくないよなー。でもこのままでいたい。
答えのない、混沌と葛藤の中で生きていた。
その頃、イアン・オブライエンは『Gigantic Days』を鳴らしていた。
そして僕は、僕なりの人生のメガンティックデイズを鳴らそうと模索していたのだ。
暗い部屋で、暗い男が、何とか世界との距離を縮めようともがいてできた曲たち。
イアン・オブライエンの『Gigantic Days』は、まさにそんなアルバムだ。
電子音楽なのに、やたら人間臭く、エモーショナルに響く。
テクノだのフュージョンだのJAZZだのといったジャンルや洒落た電子音の話じゃない。
エレクトロニック ミュージックで、ここまで泥臭く感情を吐き出せるのか。
初めて聴いたときは、そんなことを思った。
機材に囲まれた暗い部屋の中、一人で黙々と音を組み上げていったのであろう。あくまでも想像だ。
器用に生きられない男が、外の世界とうまく繋がれない男が、それでも「世界と繋がりたい」ともがき、手探りで鍵盤を叩き、シンセのつまみをひねる。
彼の鳴らす電子音には、スマートなカッコつけなんて一切ない。
不器用な人間が、ギリギリのところで振り絞った熱量と、生々しい感情が、そのまま音になっている。
部屋から一歩も出られないような暗い夜。
世界から自分だけが置き去りにされているような気がするとき。
このアルバムを聴くと、同じように暗い部屋でもがいていた男の息遣いが、電子音の隙間から聞こえてくる。
世界との距離を縮めようと必死に手を伸ばした男の音が、今度は僕と世界との距離を、ほんの少しだけ縮めてくれる。
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